EL SUR RECORDS New Arrival CDRecommended VinylRecommended Disc

How to OrderFrom StaffMap
 


From Staff

2001年11月25日 

 当店は、一応、ワールド・ミュージック・ショップということで、USED LPは多少なりともあるものの、CDに関しては、ほとんど、アメリカのロックみたいなものは置いていないのですが、それでも、やっぱり、もともとアメリカン・ミュージックで育って来たものですから、特に気に入ったもの、あるいは、よそ様で、あまり見かけないようなものを、何となく少しだけでも置いておくようにする、というのが店としての、イイかげんな方針でもあり、そんな中で、最近のオススメ・アイテムを2点ばかり、ご紹介したいと思います。

 まず、ルベ・ワデルというグループ、これがアルバムとしては1stになるんじゃないかと思います。以前、レジデンツのトリビュート・アルバムにも参加していたようですし、このCD自体、既発の12インチ・シングル曲やヨーロッパ・ツアーでの録音も含むようですから、ある程度の期間、ココしばらくは活動して来た人達だと思われます。米国西海岸のインディー系レーベルからリリースされているので、まあ、どこか西海岸あたりの人達なんでしょう...。ということで、全然インフォメーションみたいなものは無いんですが、それなりにアリがちな、それなりの変態系ブルース・バンド?ということで。それじゃあ、どんなところが気に入っているのかといえば、冒頭、ホーリー・モーダル・ラウンダーズばりの、アシッドなエフェクトがかかった歌声がフィーチャーされたジャグ・バンド風の、極めてだらしのないブルースや、2曲目、60年代ローカルでエレキなバンド・ブルース風演奏に、タブラ−とハルモニウムが付いて、意味不明の絶叫ヴォーカルが空しさを誘うナンバーも、まあイケテルし、続く3曲目はインタールードっぽく、おもちゃの鉄琴にアコーディオンっぽいオルガンが寄りそうカマトト風小品で、4曲目は、聞いてそれと分かるハウリン・ウルフの物真似なんですが、二日酔いのウルフが全然やる気ないっす、みたいなナンバーで、その脱力加減も悪くない。5曲目はウクレレなんだかチャランゴなんだか、小型ギター系弦楽器のストロークにマカロニ・ウェスタン調のトランペットがなよなよと付きそい、まあ、国境の南、を連想させるようなキサスキサス的コーラスが、超下手くそに歌われるという具合で、じっくり独りで聴いているとだんだん気持が萎えてくるような展開で、うーん、今のアメリカで、ちょっとウィットに富んだ音楽的素養の持ち主達には、こーゆー展開しかないのかなあと思わせるような、変な説得力を感じさせるバンドです....、と言えば言えないこともないでしょう。その全体としてのガレージっぽいノイジーな感触は、明らかにポスト・パンク世代以降の流儀ですから、それ風の音がダメな方にはオススメしませんが....、まあ、とにかく確実に、明日への希望みたいなものは全く感じさせてくれない作風です。

 お口直しにという訳でもないのですが、もう1点、ジャネット・クラインという女性のCDを簡単に紹介します。"PARADISE WOBBLE"〜これが、セカンド・アルバムで、ファーストはごくごくシンプルなウクレレ弾き語りアルバムでした。この新作でも、ちょっとヴィクトリア・ウィリアムスを連想させるような、ウィスパー系ヴォイスでもって、OLD TIMYなラグタイム〜ジャズ小唄をウクレレ弾き語りで聞かせています。ニューヨークでデザイナー=イラストレイタ−として暮らしている女性らしいんですが(ちなみにこのアール・デコ風のCDジャケットは自らの手になるデザインだそうです)、ノスタルジックな音楽好きが高じてCDを出してしまったという感じらしい。その意味では、やっぱり、どこか素人っぽいんですが、そこがまた可愛いらしい、ということになるでしょうか。このセカンドには、ライ・クーダーの名作"JAZZ"の演奏を、平たく凡庸にしたようなバックも付いて、ジャネット嬢のウクレレ弾き語りを地味に盛り立てています。あくまでもウクレレ&キュートな歌声が主役ということで、バックの1930年風ジャズ・バンドは脇役に徹しています。まあ、ちょっと気の効いたクリスマス・イヴのBGMにもってこいかも知れません。とはいえ、個人的にはクリスマス・イヴは前川清だな、と思っていますが....、と、意味不明ですが、この辺で。(ちなみに両CDともUS=NEW ARRIVALのコーナーで参照下さい。)

2001年11月15日 for dance music mania !

 ジャケットは何だか、サン・ラーみたいですけど、内容は全然、別。これがアナログ盤だったらなあ、さぞかし売れるだろうなあ....、というアイテム初入荷です。

 2000年作USインディー制作の、LATIN〜BRASILIAN〜フィメールVOCALものなんですが、何というかアコースティック&パーカッシヴLATIN=BOSSA=AFROフュージョン〜とでも呼ぶべきか、COOLでダンサブル、加えて、独特のJAZZYテイストにも溢れています。女性VOCALはユーロ・ジャズ・テイストだし、そしてたぶんアフリカ系の移住ミュージシャンと思われるCOUNT M'BUTUのパーカッション・プレイも、臭みがないスッキリしたものだし、early80'sっぽいFUSIONミクスチュアー感覚も洒落てます。ピアノ(ラテン・ジャズ・テイスト)、ギター(ボサ・テイスト)、ベース(ライトなファンク・テイスト)、フルート(JAZZテイスト)&パーカッション(ラテン=アフロ=ブラジリアン・テイスト)の演奏にコーラス&ソロ〜VOCAL=スキャット含む、という編成が、シンプルかつNICE ! です。レアーかつ生音系TROPICAL&JAZZY BOSSAダンス・ミュージック・マニアに、久々にグッとオススメしたいアイテムなんですけど、たぶん、絶望的にアナログは出てないと思います....。もし、CDでよければ、どーぞ、ぜひ、お試し下さい。(LATIN or DANCEのNEW ARRIVAL CDコーナーに載せてありますので、ご参照ください。)                

2001年11月13日

 さて、前回はRAREとはいえ、高価なラテンLPばかり紹介しましたが、今回は、いわゆるWORLD MUSICマニアという、因果な性分を持て余している方々の為に、最近の、数あるリリースCDの中でも、特にお薦めしたいものを、とりあえず、御紹介したいと思います。

 まず、個人的に、今、最も愛聴しているCDはといえば、ワシントン在住、エチオピア出身の女性歌手ジジの新譜で、(当H.P.ではアフリカのNEW ARRIVAL CDのコーナーに載せています)この作がセカンド・アルバムになる若手シンガーです。なぜ、ワシントン在住でエチオピアなのかといえば、米国に移住したエチオピア人の多くがワシントンに住まい、彼の地でコミュニティーを形成しているからで、というのも、1974年の軍事クーデター、91年の人民革命民主戦線によるクーデターの後も、エチオピアの国情は非常に不安定であり、多くの人が米国へ移住していて、この現在27歳になるというGIGI嬢も、子供の頃はエチオピアで育ったが、後に米国に移住したとのこと。で、その、在米エチオピア人コミュニティーの中で、今、最も人気のある若手スターが、このジジなのですが、そういえば以前にもこうした、同じようなケースで紹介された女性がいましたね。アスター・アウェーヶ、国内盤も出ていましたが、90年代半ば以降、その名を聞かなくなってしまいました。どうしているんでしょう...。意外とエチオピア人は女性歌手に関しては、結構、年令制限が厳しかったりして?若くないと受けないんでしょうか、というようなこともないだろうけど。さて、ジジ嬢も、資質はあのアスター・アウェーヶに似ています。どちらかというと軽い声、さっぱりしているし、メリスマにも強烈なアクはない。バックにも、ワシントンDCらしい?ジャジーなムードが漂っていたりするんですけど...。(ワシントンにはエチオ・ジャズの伝統があります、陰音階でドロッとした独特のムードがあって、スピリチュアル系ジャズ・マニアの間では高値で取り引きされていたりします...)それで、このジジのセカンド・アルバム、あの、どちらかというとワールド・ファンの間では評判が悪いビル・ラズウェルがプロデュース、しかもハービー・ハンコック、ファラオ・サンダースがゲスト参加ということで、そう聞くと引いてしまう方も多いんじゃないかと思います。けれど、これがなかなかイイんですね、バックも。少なくとも、前作デビューCD"ONE ETHIOPIA" のバックよりもイイし、アスターのアルバムよりもイイ。というのも別に感覚が新しいとか、ハイブリットだとか、それだけではなくて、全体にジジの歌の伴奏に徹しているところがある。決して個々のインストメンタリストが前に出て来ることはなくて、歌の背後でたゆたうような、オリエンタルで流動的で、ミディアムなグルーヴを奏で続けている。それだけなんですね。決して前に出て来ない、つまり歌謡音楽の伴奏になっているということで、しかも、それだけのミュージシャンが集まっているわけですから、クォリティーも高い。

 そのクォリティーの高いバックで歌うジジの、可愛らしというか、清々しい発声が、決してベタつくことなく、それでいてエチオピアらしい節まわしに満ちていて、どこから始まってどこで終わっているのか、皆目、見当がつかない、あのエチオピア独特の楽曲を魅力的に歌い上げているわけで、ただただ耳に残るのは、積み重ねられ、流れていくメリスマだけという、気持イイ、得難いような歌謡アルバムになっているんですね。これは、推薦できます。

 それで、聞き較べていただきたいのが、例のエチオピックス・シリーズ、....フランスはBUDAレーベルが執念のリリースを続けている1960〜70年代のエチオピアPOP編集盤の第10作目なんですけど、サブ・タイトルは"TEZETA"、これは1971〜72年にかけてエチオピアで大ヒットし、数々のカヴァー〜競作曲が生まれたナンバーだそうです。これまで、エチオピックス・シリーズというと、あのドロドロの底なしのド演歌ファンク〜R&Bに焦点が当てられていましたが、この10作目は、バラードというか、泣き節というか、演歌というか、まあ、より歌謡曲的なナンバーが中心に集められている。で、そうした歌謡の代表的スタンダードが"TEZETA"ということになるんでしょう。 このCDを聞いてみて面白いのは、これまでシリーズを通して、あまり見かけなかった女性歌手の存在が多少なりともフィーチュアーされていることで、どうも、女性歌手はエチオピアにおいて、バラード系というか、ゆったりミディアム系=非ダンス系ナンバーを中心に歌って来たみたいだということに、気づきます。そして、また、ジジの作からバックの演奏の、その現代性を差し引いてみれば、70年代エチオピア女性歌謡のあり方が、そのまま、ほとんど変わることのない姿でジジに引き継がれているんだな、ということにも気づきます。楽曲のスタイルから、歌われる旋律、そしてメリスマのあり方まで、それほど変わっていない。

 もちろん、ジジ自身のキャラクター、その清々しさは70年代エチオ歌謡には見られない、やはり現代的、あるいはワシントンDC育ちならではのキャラクターなのかも知れません。というのもエチオピックスVOL.10に聞ける歌謡の感覚は、もっとDEEP、アーシーなドロッとした感じのもので、さわやかさのかけらもないんですが...。とはいえ、30年間ぐらいの時を経ても、基本的な音楽の骨格がまるで変わっていない、男女歌手の役割分担みたいなものも変わっていない、ということは、スゴイことでもあって、やはり流石、北島三郎や村田英雄、都はるみの海賊カセットがジェームス・ブラウンのそれといしょに売られているという、エチオピアならではの音楽的嗜好の底力を見せられるような想いがします。

 と、つれづれに書き込んでいたら、随分、長くなってしまいました。本当はエチオピアから、同じく北アフリカのモロッコへ、モロッコからサハラを挟んで西アフリカのニジェールへ、〜HOUSSAIN KILIや、MAMAR KASSEYのCDも御紹介しようと思っていたんですが、疲れたんでヤメにしておきます。でも、ともにセカンド・アルバムなんですが、グナワROCKのキリ、ニジェールのカマレ・ンゴニ状弦楽器弾き語りのM. カッセイとも、意表をついた充実ぶりだった、とだけ記しておきます。(KILIはアラブのNEW ARRIVAL,KASSEYはアフリカのNEW ARRIVALコーナーに載ってますので、参照下さい)

 

◎ご質問・お問い合わせ・ご注文等は こちら まで。